暖かな午後

歩いていると気持ちがよかったので、あたりを色々と散歩してみた。髪をきった首すじを通り抜けていく風はまだ少し冷たいけれど、それでも肩に力が入るほどの冷たさじゃない。

途中、花屋さんの店先で、小さな花束が目について立ち止まったけれど、今買っても、家に戻れる時間まで、放っておかなければならないのはあまりにも可哀想で、買わなかった。白と淡いグリーンの、私の好きな感じのアレンジがいくつかあって、部屋に花を飾りたい、と久しぶりに思った。もちろん、飾った次の瞬間から、もしかすると、ネコが囓ってしまうかもしれない、という危険な環境ではあるけれど。

そこからまた少し歩いて、駅の向こう側にあるスーパーまで行った。そこには、タイ産のミニアスパラがあることがわかっていたので、そのアスパラと、あと、チリのトンプソンズという種類の種なしブドウを買った。このブドウは、東京にいるときに、ナショナルスーパーでリピート買いして、ほとんど毎週のようにこの時期食べていた気がして懐かしいな、と思った。

ついでにブティックの並んでいるところまで行って、春の洋服を見る。私の欲しいもの、というのは、もう頭の中にイメージとしてはっきりしているので、そういうのがあるかないか、それだけのチェックなのだけれど、今日は一つ、私の欲しい形のパンツを見つけたので試着してみた。7号サイズだったのだけれど、少し大きかった。もう一つ下のサイズは、明日、入荷するというので、明日また来ます、と名前を告げてきた。ここのお店のパンツの形はなかなかベーシックで綺麗、実は毎年、もしくは隔年で、同じような形のパンツを補充していることになる。色は、黒とベージュ、同じ形で色違い。いつも、そんな買い方ばかりしているので、おしゃれさんにはなれないのかもしれない。くるぶし丈のスリムなパンツで、私の体型にはよく似合う、と自分では思っている。今年はこの形のパンツに、スリッポンを合わせたい。いつものミュールやサンダルではなく、スリッポン、というのが気分。スリッポンみたいな形のかかとの無いモノ(ミュールと呼んでいいのか?)もあるけれど、夏ならそういうのも可愛いのかな。スリッポンは、黒と赤が欲しい、と思っているけれど、赤は、この前の時計のベルトのときもそうだったけど、好きな「赤」でないとダメなので、買えるような気はしていない。

ブティックをでて、ランチのためにカフェに向かう。いつものカフェ、今日はハムのサンドイッチとアイスコーヒーを頼む。そんなふうに、少し気持ちを自分の内面からそらすことに努力していたら、一瞬、ほんの数分だったけど、執着を手放している自分に気づいた。気づいたときの爽快感ったら、なかった。でもまた、気づいてしまったら、少し後ろ向きに戻ってしまったけれど、そういうふうに自分が出来たことには驚いた。そして、その一瞬の解放を感じたときの感覚を思い出すと、なんとも複雑な気持ちになった。

お昼前に予定をチェックしたら、今日の午後の仕事は、それほど忙しくはなさそうだった。とはいえ、このところ任されている事務仕事をしなきゃならないので、遊んでいるわけにはいかないのだけれど。しばらく分厚い本でも読みながら休んで、夕方からの仕事に備えようと思う。