革製のミュート

あー、今日は忙しかったなー、ちょっと異常、と思いながら仕事を終えて、明日はお休みだし、ゆっくり帰ろう、と高速を使わずに新御堂筋で帰ってきた。本当はこの道、私は大好きな道の一つ。神崎川まである両側の側道の並木も美しいし、淀川にかかる橋から見える大阪市内のビルの明かりの美しいことったら。そして、最終地点に降りる手前で3又に分岐するその形が、まるで遊園地のジェットコースターみたいでおもしろい。実際、そこから先は、かなり道幅が狭いので、慣れていない人にはスリルが味わえるかもしれない。

南森町の終点まで新御堂筋を走り、そこからは少し国道を東へ、そして松屋町筋で南下というのが私のおきまりのコース、クルマの量も少なくスムーズに走り、マンションについて車庫入れ、そしていつものようにポストをチェック・・あ。少し大きめの封筒。

何だろう?とドキドキしながらエレベーターを上がり部屋の鍵をあけて「ただいま」とにゃーに声をかけてから封筒を開けてみる。あ。ミュートだ。箱を開ける。わあ。革製のミュートだよ。

少し前に、ちょっとしたきっかけで、私が持っていた秘密のいいモノを送った人からの、お礼のプレゼント。なんだかかえって悪いことしちゃったかも、と思うほど、素晴らしいお返しを頂いてしまった。

今まで普通のゴム製のミュートしか手にしたことのない私には、完全に豚に真珠、のれんに腕押し、あ、これは違った、猿も木から落ちる、あ、もっと違う、なんだろう、馬の耳に念仏?あ、違うなあ、とにかく、もったいない、良い物。それに、今は毎日楽器にさわっていないので、だいたい音がちゃんと出せない。毎日弾かないと、バイオリンは音が出なくなる。他の楽器でもそうだろうけれど、本当に一日弾かないだけで、いぢけてしまって音を出してくれない。その楽器を、もう20年ちかくも忘れ去っていて、つい最近、また思い出して取り出してきたのだけれど、マンション暮らしで、夜は弾けないし、となると、毎日手に取るなんて、全く無理。お休みの日、それも、機嫌のいいお休みの日に出してきて、ちょっと弾いてみるくらいのことしかできなくて、ああ、これじゃあなあ、と思っていたのだけれど、先日、お話ししたオケ現役の人が、「毎日弾かないなら弾かないなりの音がある」と言うのを聞いて、ああ、たしかにそうだなあ、と思ったところだった。

明日は、まず、力いっぱい弾いてみよう。しばらくボウイングでならして、少し練習曲でも弾いてみよう。それから、この革製のミュートをつけて、どんな音色がするか、試してみよう。なんだか、ドキドキする。

こんなに素晴らしいプレゼントを、どうもありがとう。そして、こんなに嬉しい気持ちになれる機会を、どうもありがとう。