以前の文章の発掘

丁度一年ほど前に書いた文章を見つけたので、ちょっとここに貼っておきます。仕事について、その頃の私が、私なりに考えて書いた文章。今の認識と、大筋では変わってはいないんだけど、やっぱり微妙に温度の差はでてきていておもしろいな、と思ったので。

以下、引用。

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ここ数日、ちょっとシビアに考えていることがある。私の仕事そのものである、歯、について。

今までも、漠然と考えたことは何度もあるのだけれど、どう考えても、歯科医師、というのは社会通念上のイメージとは裏腹に、過酷な労働条件、低賃金、頑張りに対する仕事の達成感の低さという問題をかかえているように思う。私だけ?なのだろうか、と周囲を見渡してみるけれど、ほんの一部のサクセサー(に見える人たち)以外の同業者の方々は、多分、私の考えていることは、ちらりと考えたことがあるだろうと思う。

こういうと誤解を招くような言い方だけれど、仕事が嫌いなわけでは、決してない。嫌いどころか、私はこの仕事が気に入っているほうだと思うし、ラッキーなことに、自分には向いている、とも思うことができる。今の職場にはほとほと嫌気がさしてはいるけれど、それでも患者さんと直に接している時間は、そんなことは全く考えなくてもいいくらい熱中して楽しむことができている。これは、とても幸せなことだと思う。

これまでの人生、私の周りにはどうしても同業種の人ばかりが多く、全く違った世界の人たち、たとえばサラリーマンの人や、自営業の人、公務員の人など、一般社会のマジョリティに属する人たちとの交流というのがあまりにも少なかった。俗に言う世間知らずなままずっとやってきたものだから、自分の立ち位置というものがよくわからないままにここまで来てしまった。そしてここ数ヶ月、今までに深く接したことのない世界の人たちと一緒に過ごすことが増えて、覗いたことのなかった世界に、色んな意味で愕然とすることが本当に多くなった。

今までもなんとなくは感じていたけれど、あまりにも歯科医療というもの、社会的地位が低すぎる。プライオリティが低い。まあ、歯だし、ね。死なないし。いいんじゃない?べつに、的な扱い、それってどうなんだろう・・保険制度のひどさ、というものをここで論じるつもりはないけれど、それ以外にも、保険のきかない歯というものは高価だというイメージ、これも一概にはいえないけれど、たとえばヴィトンのバッグには10万なんて安い、と思う人が、一本10万のセラミックの歯は高いという、300万の車は安いと思う人でも、300万の入れ歯は高いという、そんなこと、ってよくあることじゃないだろうか。毎日使うモノなのに、手入れさえ適当にしかしてもらえず、その挙句に、10年持たなければダメだ、とか、なんだかヘンじゃないだろうか。でもそれってどうしてなんだろう。どうして大切なものとして、認識してもらえないのだろうか。どうして、歯科医療を軽く見られるのだろうか。自分の仕事として誇りに感じているだけに、この矛盾、とても不思議でならない。

もちろん、歯の状態に対する社会認識が影響することなのは、はっきりしている。だけれども、歯科医療従事者側にも問題があるのではないのだろうか。満足行く結果を出せない、技術不足、認識不足、知識不足。仕事以外の問題でも社会問題を引き起こしてしまう同業者が後を絶たないこと。それ以外にも、私が認識していない問題がまだまだあるのかもしれない。だけど一番の問題は、歯科医師自身情熱をもって、社会を、人の認識を、変えていける人間があまりに少ないことかもしれない。そして、もしかすると、私自身もまだまだその努力が足りないのかもしれないことが、私にとっては大きな問題なのかもしれない、ということに気がついてきた。

今すぐに変えていけることは、そう多くはないけれど、あと数ヵ月後には必ずやってくる私の職場の環境変化、そこからが私の新しい勝負になるに違いない。また別の意味での制限が出てくるだろうし、そこでまた同じことを繰り返すのでは、前へ進むことはできないだろう。今回の職場でのあれこれで、いい仕事をちゃんとやりたいという気持ちがとても強くなっていて、これからの人生まだまだ歯にかかわって生きていくのならば、この問題を自分の中でクリアにすることは大切なことだと思う。歯科医師としての人生を色々な意味で豊かにするために、今ここでうんうん唸って考えることは必要だと思うし、それが私の使命を見つけることであるようにも思う。

まだまだ結論は出ないし、もしかすると、この先一生かかってもわからないことかもしれないけれど、しっかり考えてみよう。たかが「歯」されど「歯」、私にとっては「歯は命」。

引用ここまで。---------------

基本的には何も考えは変わっていない。

「だけど一番の問題は、歯科医師自身情熱をもって、社会を、人の認識を、変えていける人間があまりに少ないことかもしれない。そして、もしかすると、私自身もまだまだその努力が足りないのかもしれないことが、私にとっては大きな問題なのかもしれない、ということに気がついてきた。」

この部分が、今、私の中ではクローズアップされている部分。何とかできないだろうか。個人レベルのことなら、私が頑張ればできる。でも、それは個人レベルのことでいいんだろうか?だとか。そっかー、1年前からこういうこと、考え初めていたんだな、と少し懐かしくなったので、メモ的に貼り付けておこう。