モクレンの花

去年は本当に、モクレンの花をたくさん撮った。この季節、モクレンばかり探して走っていた。今年はどうしてか、ハクモクレンではなく、シモクレンに心惹かれる。陽の光がとりまく紫色の肉厚の花びら。そういう色を写真に撮ってみたい。

今日はまた写真を撮ろう。

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去年、結局一番たくさんの写真を撮った木は、コンビニ脇にたっていた小さな木だった。そのコンビニには強盗が入って、そのあと、店を閉めてしまった。しばらくはそのままだったけれど、少し前に建物は取り壊されていて、周りの木だけが残っていた。ハクモクレンは今年も花を咲かせていて、また撮ろうかなあ、と思っている矢先に、急に工事が始まった。すべてが更地になった。モクレンの咲きかけていた木は、なぎたおされてコンクリートの上に置かれていた。

一瞬、写真を撮ろうかと思ったけれど、やめた。そこが私の甘いところかもしれないけれど、無理だった。今はまだ、マイナスの感情を残す強さは、私にはない。

一つ気づいた。心が動かされたときにシャッターを切る、だけれども、大きく動きすぎたときには、シャッターは切れない。もっとニュートラルな気持ちのときにだけ、シャッターを切っている。だから、私の写真は、静かなんだ。いつか、もっとざわざわした写真を撮るときが来るのだろうか。

逆に言えば、ニュートラルな気持ちになるために写真を撮っているのかもしれない。それならば、ざわざわした写真を撮る必要はない。