バレエ「火の鳥」組曲(1919年版)/ パリ・バスティーユ管弦楽団 / チョン・ミュンフン

今まで聴いた、どの「火の鳥」とも違う。まるで、目の前に次々と音のジオラマが繰り広げられるかのような、それでいて、刺激的な(言い換えれば耳障りな)音が全くといってない、うっとりと聴いていられる不思議な音楽。驚く。柔らかく、エレガントで、そして鮮やかな音が、私の周りをくるくる回る、まるでそれは遊園地のティーカップに乗っている子どもの私が、目にうつる景色が流れていくのを見てはしゃいでいるような、そんな気持ちになったかと思うと、すっかりキラキラと美しい音に身をゆだねるだけのうっとりとした時間が訪れる。何も疑問に思うことなく、すっかりと惚けて聴いてしまった。私の持つ、「火の鳥組曲に対するイメージが、全く変わった。

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もう一度繰り返して聴きながら、この素晴らしく自然で情感溢れる音量の変化、これがもし自分たちの演奏で少しでも真似することができたら、それはもう、「ああ、火の鳥を演奏することができてよかった」という満足感に繋がるだろうなあ、などと思う。

火の鳥」、実のところ、演奏してみたい曲ではなかった。でも、今は違う。もちろん、こんなふうに演奏できるわけはないのは知っている。でも、少なくとも、頑張って練習してみたいと思う曲に、今の数十分で、変わってしまった。

聴いてよかった。楽譜をもらうまえに、聴いて、本当によかった。